アルミホイルをかぶせたら、温度上昇の様子がちょっと変わった?
そろそろ書くネタがなくなってきたので、カヌレ日記も前回でいったん最終回かなと思ってたけど、小さな発見があったので書いてみる。
先日、わたしの適当なカヌレ日記を見て参考にしてくれた方がDMをくれて、書いててよかったなとしみじみ思いました。(Nさんありがとう!)
そこで「アルミホイルをかぶせると良い」ということを教えていただいた。実は過去に1,2回ほど試して惨敗だったのだけど、なんとなく頭の片隅に残ったので今回はまた違う条件でやってみた。
といってもちょっとしたハプニングがあって、思いつきでやったのだけど。順番に説明してみる。
内容など
今回の温度設定はまず最初に250℃。予熱してからさらに10分空焼きしてしっかり温める。先のNさんによるとやっぱり扉を開けると温度降下が著しいそうで、うちのも多少下がっているだろうとは思っていたが、自分が思っている以上なのかも、とハタと気づいた。
そういや、前回の記事で実質の温度は表示温度の7割程度とあった。これが正しいとすれば250℃に設定しても175℃なのね。初めて計算したわ。
予熱完了した後に焼成時間を設定して再スタート。と、ここでミスがあった。いつもなら設定時間MAXの90分にするのだが、間違って20分に設定してしまった。
うちのオーブンは庫内温度が200℃以上になってからストップすると、再び温度設定する際、最高200℃しかできない。焼き始めてから「やっぱりもうちょっと長めに焼きたい」ということができないのだ! もし再び200℃以上にしたいのであれば、庫内温度が室温程度まで十分に下がり、自動制御のファンが止まるまで待たなければいけない。ゼロからやり直さなければいけないのだ。
スタートさせた後で時間を短くすることはできても、長くすることはできないので、温度命のカヌレを焼くときは、いつでも時間を90分に設定するのがマイルールというわけ。
それを間違って20分にした。
予熱+20分空焼きを予定していたので、それが頭に残っていたのだろう。しかし20分空焼きするとカヌレの焼きはじめはMAXで200℃。
さてどうしよう? と考えた結果、
250℃予熱+10分空焼き
↓
10分250℃焼成
↓
適当な時間200℃焼成
にすることにした。
予熱+空焼き10分が終わってカヌレ6個をオーブンへ。すると10分でフツフツとしてきた。いつも設定している200~230℃だと、まだ沸騰前かせいぜい1、2個がフツフツしているので早い。さすが250℃。
このままだと上部が先に焼けて発射してしまうに違いない。250℃のタイムアウトと同時に200℃に切り替え、同時にアルミホイルをかぶせた。
そこで20~30分ほど焼いたところで覗いてみると、いつもと違うことに気づいた(細かい時間は見てない)。まずいつもなら上部がしっかりメイラード反応で焼けているはずが、今回はまだ生っぽさも残っている。
そして注目すべきはラムレーズン。わたしはプレーンを焼くときはいつもラムレーズンを2,3粒ほど入れるのだが、それが上に浮いていた。いつもは底にたまっていたような気がするんだけど。。?
【追記】「これを見てアルミホイルをのせた」と書いてるけど、アルミホイルを外した後じゃないとおかしいことに後で気づいた。たぶん後のはず。。
放っておいたら比重の重いラムレーズンは沈む。それが浮いていたということは沸騰した水蒸気の粒に押し上げられたということか。いつもなら上部から温度が上がり生地の硬化が先に始まるからラムレーズンが動けないところ、上の温度上昇が緩いから今回は浮いてきたということ? だとすれば、上と下で温度の変化は比較的小さく抑えられたのかもしれない。
でも過去がどうだったかイマイチ思い出せない。浮いていたときもあったような、なかったような……。じゃあなぜ今回だけラムレーズンに注目したのかというと、少なくとも焼成中に上部が生焼けの状態でラムレーズンが浮いているのは、初めて見たような気がしたから。いつもとなんか違う、というのは確かだった。
で、今回は飛び出し1センチほどで、途中で開けてトントンしようか迷ったが、面倒なので放っておいた。するとまた型に戻った。ちょっと飛び出しが大きかったので、薄い帽子のツバみたいになってしまったけど、2センチレベルで発射したときよりはずいぶんマシ。
適当に焼いて取り出してみると、やっぱり底面は焼き目がついていないので、ひっくり返して180℃10~15分ほど焼いた(いつも条件を変えてやっているので焼き時間は数字に頼らず常に目視)。この底面生焼けは焼き直さない人もいるみたいだけど、わたしはとりあえずカリっとさせたいので必ずやっている。
焼きたてでミツロウの透明感があるのを見るのが好き。穴にちょっと溜まって小さい池みたいになってるんだよね。冷えるとちょっと白くなってしまう。
改めて出来上がりを見てみると、ラムレーズンは浮いているのと沈んでいるもの両方あった。浮いているのが良くて沈んでいるのは失敗、とかいうわかりやすい違いはなかった。
※粗熱が取れたら今の時期は冷蔵庫で保存する。これは翌朝のカヌレ。ちょい焦げ気味だけど、わたしの中ではギリ許せるレベル。人にはあげないけど。
結果と考察
アルミホイルをかぶせることで、上部だけが高温になってメイラード反応が進んでしまうことを防げる。
過去記事で書いたカヌレ必勝法は「上部と下部の温度差をなくす」ことであり、うちのオーブンでそれを実現するための一番手っ取り早いのはアルミホイルっぽい(大前提として、事前に生地の温度をぎりぎりまで上げておく)。
前にアルミホイルを試した際、普通に発射してしまい全く効果を感じなかったのだが、おそらくその時は温度が低すぎて全体的に低温で焼成していたからだろう。今回は250℃設定にしてできるだけ早めに生地の温度を上げ、先にメイラード反応が進みそうな上部にアルミホイルをかぶせたので、比較的うまくいったのかもしれない。
ということは、時間と温度とアルミホイルをかぶせたり外したりするタイミングがぴったり合えば、もっと上手に焼けるのか。
①最初に250℃(うちのオーブンMAX温度)にして、生地全体の温度をできるだけ早く上げる
②上ヒーターの熱が直接当たる上部は先に高温になるので、メイラード反応が進む前にアルミホイルをかぶせる
③生地全体の温度が一定になったところでアルミホイルを外す
この各手順の温度と時間、タイミングがカギになるのだろう。
③で上より下の方が温度が上がるということはあり得るだろうか? アルミホイルを外すとやっぱり上が焼けやすくなるので、アルミホイルをかぶせている間に下の方が上昇しているほうがありがたい。熱伝導率はアルミより銅の方がずっと高いので、可能性はゼロじゃないかも? ただ細かいところまでは分からない。厚みも違うし上下ヒーターの影響も全然違うから。
場所によっての温度上昇についてはいろいろと予想できるが、要因が複合的なので1つ1つ検証するのは不可能。よって、あとは実践あるのみ、か。結局のところ。
次やるとすれば、、
250℃予熱+20分空焼き、5~10分250℃焼成して表面が沸騰し始めたらアルミホイル、そのまま250℃で10分ほど様子見、200℃に下げてX分。型から取り出して上面焼けていなければひっくり返して焼く。
こんなかんじかなあ。
おまけ考察 底面の温度が上がらない
底面の中心に色がつかない。つまり中心部は温度が低い。過去どうだっけ? と見てみたら底面がまったく焦げ目がない時もあったりした。それで今きづいたんだけど、黒ウーロン入りの底面が想像以上に美しい。
t-syun.hatenadiary.jp
この時の条件は「ミツロウを使っている」「寝かせた時間が48時間」「茶葉が入っている」というのが特徴。この時の記事では「ミツロウがいいからだ」と結論づけていたけど、本当にそうかな?
茶葉という不純物が生地の温度上昇を抑えたのかもしれない。というのも、中央部分はへこんでいるため、茶葉は自然と周囲に流れていく。すると中央部分は茶葉が少なく周囲は増える。それが温度上昇に変化をもたらしていたのではないかと。
この黒ウーロン入りでは、自分で粉末にしたのをそのまま入れていたため、比重の高い茶葉は沈んだということ。こういうお茶のフレーバーカヌレを焼くとき、ほとんどの場合、茶葉を入れたまま焼くのではなく、煮出すだろう。そうしないと生地に偏りが出て温度や味に影響してしまうから。
うちのように温度設定が難しい家庭用オーブンなら、デメリットを逆手にとって比重の重い不純物を入れることによって生じる温度差を利用するのもアリかもね。
底面の温度が上がらないのは、型が銅製で熱伝導率が良いこととヒーターが弱いことが関係しているのだろう。庫内温度が不均一なのでヒーターの直接の熱の方が影響が強い。だからヒーターの熱の影響を受けにくい底面はほかの場所に比べて極端に温度が低い。
理想をいえば、型を置く位置に関係なく温度を一定にできるオーブンであることに加えて、天板と型が一体になっているようなものがあればもうちょっと上手に焼けるんだろう。
【小話】豆乳カヌレとアレルギーの甥
乳アレルギーの甥っこのために調整豆乳で作ったら見るも無残なカヌレができました。まあ香料とかいろいろ混ざっているので仕方ない。本来なら無調整で作るべきだけど、うちは調整豆乳を常備しているので、それでいいやと。
発射するわ膨張もすごいわ、生地は柔らかいわで何とか形状を保っているけど、「なんじゃこりゃ」なシロモノが完成。それでも甥っこは「ウマイウマイ」とバクバク食べてくれたので、まあいいか……という感じでした。
アレルギー甥はわたしが牛乳ナシのお菓子を作ると「全部自分のもの」と認識する傾向がある。売り物の生菓子がほぼ食べられないから、わたしの作るお菓子は彼にとって貴重なのだ。家族もそれを知っているので優先してあげるのが暗黙の了解となっている。
しかし前回カヌレを作った際にアレルギー甥(弟)が食べ過ぎたため、NOアレルギー兄の分け前がなくなってしまったのね。カヌレは家でも買わないから、お兄ちゃんにとってもレアお菓子だったというのに。「オレ、食べてないんやけど!」と悲痛な叫びをあげていて、さすがにかわいそうだったので、いつもなら6個しか作らないところ、オーブンを2回まわして12個つくりました。2回ともオバケみたいなカヌレだったけど、弟は相変わらず食べまくる。
コイツは遠慮という言葉を知らない。「あんたね、いっつもお兄ちゃんに譲ってもらってるんだから、たまには兄ちゃんに譲りな」というと、プぅっと膨れてた。多少の自覚はあるのかしら。しかし、注意されてもしばらくしたら忘れるという都合の良い特技を持つ彼。またカヌレを食べ(なんでやねん)それでも余ったので、今回は兄弟喧嘩もなく、叔母は一安心しました。
最後に
ハイスペックのオーブンを持っていさえすれば簡単にできるであろうカヌレ。もちろん、うちのオーブンがダメというのではなく、用途によって機能が違うのは当然であって、カヌレ向きではなかったというだけ。
しかしサーモスタットや高温の再設定ができないという安全装置がつき、上面と底面のヒーターが特徴的かつそれぞれに熱効率も違う。コンパクトがゆえ温度が下がりやすい。おかげでこんなに苦労しており、過去記事でもグチばかり書いている。
しかしだ。
昔だったら薪などで起こすしかなかったオーブンがガスになり、ガスがなくても電気で各家庭に1台置けるコンパクトかつ安全なものになり、そして温度調整という便利機能がついた。家事だけで一日が終わっていた主婦を助ける文明の利器。それが当たり前になりすぎて、逆に「薪でオーブンやってみたい」なんて思い始める始末。ないものねだりとはこのことだ。かつては選びようのない不便さを、今は好んで不便な道にいくことができ、嫌ならすぐに戻ることもできる。贅沢な遊びだよね。
主婦の暮らしを楽にしようとここまで進化してきたというのに、「温度調整ができない」なんてことでグチをいうわたし。昔の人からしたら「そんな便利なものを使っておいて文句いうんじゃないよ!」てなところか。
そんなカヌレだって、触感や独特のコゲの苦みが特徴とはいえ、中身はプリンでありカスタードクリームと一緒。これが食べたいとこだわることが、そもそも遊びであり趣味。外で買ってもせいぜい数百円だし主食じゃない嗜好品。オーブンがどうのこうの、おいしいカヌレがどうのこうの、エラそうなことをいっても、全部まとめて「遊び」なんだなあ。。
などと考えた。元も子もねえ。
まあね、うまくいって喜んでいるときはいいけど、そうじゃなくイライラしてる時は「わたし遊んでるんだったわ」って思い出そうと思ったのでした。
<過去のカヌレ日記>
① カヌレを作ろうと思い立ち、レシピ選定と型の購入
② 色んなフレーバーを作っているうちに難しさを知る
③ 寝かせる時間を24Hと48Hで変える
④ 温度を変えてみる
⑤ 途中で中身をひっくり返してみる
⑥ 天板でなく網を使う
⑦ 振り返り
⑧ また温度を変えてみる
⑨ 違うレシピにする
⑩ 元のレシピをアレンジ
⑪ 初心に戻ってYouTubeで勉強
⑫ クルミ入りはおいしい
⑬ ミツロウのはなし
⑭ いったん、脳内を整理していろいろ考察
⑮ 科学現象について真面目に調べた
⑯ 15の記事について検証
おまけ カヌレの歴史を考えてみた
ついにカテゴリーに「カヌレ」を追加したよ。やれやれ。