おやつく日記(旧:おやつをつくるやつ)

ひまさえあえば、ていねいにくらす

時間が経ってもふわふわ 天然酵母クロワッサン

冬はクロワッサン強化シーズンです。

 

 

 

 

1つ前の記事では「今年はチョコにハマってる」と書いたけど、パンづくりではクロワッサンにハマっている。数年前まではオイルお菓子にカンパーニュ、ベーグルなどがっつりヘルシー志向だったのだが、飽きてしまって180度反転したらしい。バターたっぷり、こってり系スイーツ&パンがマイブーム。

 

 

 

クロワッサンは過去に数回経験があるが、普通のイーストでは作ったことがなく、林弘子さんの天然酵母パンの本に出会ってから初挑戦している。しかし、発酵がうまくいかず、バターの溶け出す量も半端なく、クロワッサンなのにハード系かと思う固さが嫌になって作るのをやめた。

 

 

 

今年、久しぶりに作ってみて、気持ちの余裕が出てきたのか丁寧にじっくり向き合ったらば、今までの苦手意識はどこへやら、普通に上手にできた。

 

 

うまくできた理由は、本に書いてある通りに作ったから(笑)プラス、冬に作ったから。

 

 

 

前に失敗した理由は、温かい時期、しかも手順を読み飛ばして発酵温度を適当にしていたからだったみたい。

 

 

本では「2次発酵させて最後は室温~30度になるようにする」とあったのを、横着して20度以下で仕上げたのが悪かった。

 

 

焼いているうちに150グラムほど折り込んだバターのうち、見た目50グラムくらい溶け出してしまい、天板の溝がバターの海になっていた。

 

 

初めて見た時は、「クロワッサンというのはこういうものなのねえ。バターもったいねー」と都合よく解釈していたのだけど、ネットで調べたらただの失敗例だったという……。成功すればほぼ溶け出すことはないとのこと。がっくり。

 

 

ということで、真面目に忠実にやってみることにした。

 

 

林弘子さん流・天然酵母クロワッサンは寝かせる時間がやたら長い。マイペースな天然酵母と、高温が苦手なバターを使っているからだね。

 

 

一次発酵で一晩寝かせ、四角く伸ばす前に一晩寝かせ、バターを折り込んで数時間寝かせ、2次発酵で一晩寝かせ。寝てばっかり。

 

 

冬は室温に戻しても上がらず、発酵もゆるゆるとしている。そこでラスト1時間ほどはオーブンの発酵機能を使わせてもらって30度に。すると、バターがギリギリ溶け出さず、パン生地はふわふわになる。ゆらすとフルフルふるえて、本当にあかちゃんみたいにキレイでツヤツヤ。ほんとにかわいい(笑)

 

 

室温だけで二次発酵15時間後(右)、ラスト1時間を30度でオーブン発酵(左)

 

 

180度で20分ほどで焼き上げると出来上がり。外パリパリ、中ふんわりのクロワッサンの出来上がり。甘さは生地に入れた少量の砂糖のみ。パン屋さんのクロワッサンに慣れていると甘いのが普通だけれど、あれはシロップをかけているのね。3時のおやつでなければ、シロップなしのほうがいい。

 

1次発酵後、48時間ほど冷蔵庫で寝かせたのでやや過発酵気味に。生の生地は酸味を感じたので心配だったけれど、焼いたらおいしかった。なんかほんのりチーズ風味がするなあ、と思ってたんだけど、過発酵の酸味か。

 

 

パリパリのクロワッサンも時間が経てば湿気を含んでフニャっとしてくるのは仕方ない。でもやっぱり天然酵母は一味違うんだぜ。大量に作って消費できない分は焼き上げてから冷凍庫に保存するんだけど、さすがに焼きたてのパリパリは無理にしても、意外にザクザク感は残っているし中はふんわりしっとり。

 

 

これは街で一番のクロワッサン屋になれるわーと自画自賛(スコーンの時も同じこと思った)。

 

 

 

天然酵母っていうのは、土や木と一緒だ。時間をかけるほどに、その場所にしかない菌を育み、その土地に住む生物や人間と馴染んでいく。栄養満点で個性ある新参者の酵母もいいと思うけれど、うちに招き入れてみる価値はある。市販の酵母や一回ずつ起こす天然酵母も、時と場合によって使い分けつつ、育ててみるのはおすすめ。うちのいまの酵母は1年超えたのかな? 使うほどに丸くなっている気がする。

また、樹齢ウン十年の木ほど長持ちするように、手間をかけて酵母を育てる方が、出来上がった後も長くおいしい。

 

 

 

数年前までストレスが多くてピリピリしていたわたしは、酵母もダメにしやすかった。手をかけるヒマがなかったいうのもあるけれど、毎回こねるわたしの常在菌も影響していただろう。冷蔵庫も以前はもっとごちゃごちゃしていたので酵母にとって物理的環境もずいぶんと変わっている。

 

 

わたしはペットを飼っていないが、酵母はわたしにとってペットのような家族のような存在だ。ペットや家族と違って食べるけどね(笑)こねているときの触感や香り、味で酵母の体調をはかっている。たぶん、酵母もわたしの常在菌と会話して一緒に共存して形を変えている。

 

 

焼いたら酵母は死んでしまうのだろうか。生物的にはどうかわからないけれど、豊かな風味として変化して、わたしがそれを食べて自分の身体で分解し吸収し、そのわたしがまた酵母を育てるのだから小さい循環が起こっているわけだ。だとすれば、酵母とわたしの境目はどこだろう? 微生物を媒介にずっと情報をやり取りし続けているってことは、酵母とわたしは連続しているよね、など考える。

 

 

酵母だけでなく、すべての生き物について似たようなことは言えるだろうが、定期的に触って食べていると、その実感が強くなる。

 

家庭菜園の野菜にも近いものを感じる(わたしはほぼノータッチ)。家庭菜園担当の母はわたしほど生物の循環を意識していないので、不自然に化学肥料を与えすぎたり発生する虫にイラついていたりする。

 

「それは、そういう管理をしているからだよ。虫を殺しても意味ないよ」というと「何もしないくせに文句だけいう」と不機嫌になるので最近は口うるさくいうのをやめたけどね。母が甲斐甲斐しく世話をしている白菜は虫だらけで、ほったらかしで野生化している小松菜とかジャガイモが元気なのを見て、少しでも何か悟ってくれたらと思う。

 

 

発酵食についてはいま、その価値が見直されている。栄養価がどうとか保存がきくとかいうけれど、単純においしいし育てていて楽しい、これに尽きる。

 

 

先月つくったクロワッサン。これもおいしかったけど今回の方がおいしそう

 

 

 

1年ちょっと前の初・天然酵母クロワッサン。今見たら全然アカン(笑)

 

 

 
 
 
 
 
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