最近、またハマっているカヌレづくり。いつもより深く考えてみた。
うまくいくときとそうでないときの条件の差が分からず、ネットをやみくもに調べ、いろんな人の検証動画を見ているうちに、いろいろひらめいた。
ここからはあくまでわたしの考察。正解とは限らないのであしからず。
温度以外の条件はオマケ
カヌレはやっぱ温度が命だ。(過去記事で何書いたか忘れたけど、その時々で思ったことなのですぐ変わるし忘れます)
「牛乳を沸騰させる」「生地を混ぜすぎない」「一晩寝かせる」とか、カヌレといえばコレという鉄則があるけれど、温度がバッチリだったら関係ないんじゃないだろうか。
実際、温度以外の条件は守らなくても成功している人がいるらしい。つまり絶対条件ではないということ。
カヌレがあまりに爆発(飛び出して)してしまうので、一つでも思い当たる要因をしらみつぶしに試した結果、これが通説になっただけだろう。わたしの経験上、ほかの条件を頑張ったところで、温度をサボったらやっぱり爆発するし。
プリンの科学からヒントを得る
で、温度の話。
カヌレは爆発するけど、卵や牛乳入りのマフィンもケーキも爆発しない。カヌレとの違いは、膨張の原理が違うこと。マフィンやケーキはBPとかメレンゲの気泡が膨らむのに対し、カヌレは卵が高温になった際に「ス」が入ることによって膨らむ。「ス」といえば茶碗蒸しやプリンで聞いたことがある。加熱した際の生地の変化はこちらに近いということだ。そこで「プリン 科学」のキーワードで検索してみた。
すると、こんなのがあった。
知識の宝庫!目がテン!ライブラリー
オーブンの天板の上にキッチンペーパーを敷き、その上にぬるま湯をかけ、プリンの素を蒸し焼きにするのです。オーブンの温度は140度で、30分間蒸し焼きにします。プリンは加熱されることで、卵に含まれているタンパク質が網の目構造になり、水分がその中に閉じ込められるので固まるそうなのです。この状態を、「ゲル」と言います。
しかし、なぜ蒸し焼きにしなくてはならないのでしょう?そこで濡れたキッチンペーパーを使わずに、そのまま140度で30分間プリンの素をオーブンで焼くと、なんとプリンは固まらなかったのです。
実は、「蒸し焼き」という調理法にはプリンを作る時に必要な3つのポイントがあったのです。まず1つは、早くプリンに熱が伝わるということ。実はプリンが固まりだす温度は約80度なのですが、水を入れずにそのまま140度のオーブンで焼いたプリンの表面は、30分たっても80度に達していなかったのです。熱伝導率の良い水蒸気があることで、早くプリンに熱を伝えられるのです。
プリンの温度変化グラフ また「蒸し焼き」にすると、早くプリンに熱が伝わる上に、さらに80度付近で温度を保つことができるのです。一方、そのままオーブンで焼いてしまうと、プリンはなかなか80度に達しない上に、達した後もどんどん温度は上昇し続け100度近くになってしまいます。実は、プリンは100度近くで熱すると卵の中の水分が蒸発し、「す」が入ってしまうのです。
さらに「蒸し焼き」という調理法には、卵の中の水分を外に逃がさない効果もあり、プリンを美味しく作るにはこの「蒸し焼き」がポイントだったのです。
とのこと。
卵は80度で固まり始め、100度近くで「ス」が入る。
プリンの場合はスが入るとダメなので、80度近くを保つのが良い。
しかしカヌレはスを入れたい。ここでゆっくり熱が入ると、スが入る前に卵が固まってしまう。そして、型の中で温度の高い上部は先に焼けて下にしか逃げられない水蒸気が底にたまり、生地を持ち上げてしまう。
これを防ぐためには、低温の時間をできるだけ短くし、一気に100度まで上げることが大事なのではないか、と考えた。
対策
対策①生地の温度を上げておく
生地が冷たいとじわじわと温度が上がったり、場所ごとの温度差が大きくなるので×。可能ならば熱変性が起こるギリギリまで温度を上げておく方が良い?
対策②庫内温度を上げておく。そして下げない
できるだけ温度を下げないように天板を入れて予熱。入れる瞬間の作業はできるだけ手早く。特にうちのオーブンは小さいため、油断するとすぐ温度が下がってしまう。
さきほど引用したサイトで「天板に湯を張ると庫内温度が上がりやすい」とあったので「おっ」と思ったのだが、同時に生地内の水蒸気を外に逃がさない効果もあるとのこと。じゃあカヌレ向きではないのか。でも生地が沸騰するまでだったらOKかな。例えば、生地が沸騰すると同時に全部蒸発する量だけ熱湯を注ぐとか。
対策③庫内温度をできるだけ一定にする
もうひとつ、うちの家庭用オーブンのクセを考慮した対策も必要かもしれない。容量が小さいため、庫内の空気の温度より上ヒーターの影響がかなり大きい気がする。
それでふと思ったこと。カヌレの断面を見ると、焼いているときの上の方が気泡がつぶれていて、下に行くほど大きい。ありとあらゆるカヌレ動画を見たところ、程度の差はあれど、多くがそんな感じだった。
考察するに、上の方が温度が高いため、先にスができて生地も変性するが、上下で時差があるため、下から押し上げられた空気と固まった上部の壁の間で気泡がつぶされてしまうのではないだろうか。
だとすれば、庫内温度が均一なオーブンほどこの差が小さい。たまに、上の方が気泡が大きいものもあって、どうやってるんだろうと不思議だった。下ヒーターが強めなのかも。
うちのオーブンは上下で温度設定できないので、力業で何とかするしかない。上ヒーターの熱を少しでもさえぎるため、しばらくアルミホイルなどで覆うなど考えられるだろうか。あるいは、下部の温度を上げるため、入れる前の型の下だけ熱くしておくとか。ちょっと厳しそうだけど。
他の条件についても考える
この文章を書いていると、気になることがいろいろ出てきたので調べてみた。
牛乳の話
まず、牛乳を沸騰させる理由について「ふきこぼれを防ぐため」というのが定説らしいけど、そもそも牛乳の殺菌て高温じゃなかったっけ?
調べたら日本の牛乳はほとんどが高温殺菌で120度以上数秒とのこと。だったら改めて沸騰させる意味とは? 低温牛乳ならまだ意味があるのだろうか。海外は低温殺菌が常識というのは初めて知った。
わたしの個人的な考えとして、これから加熱するものを事前に一度加熱する、というのが好きではなく、シュークリームなど「加熱しないと不可能」っていうのでない限りは避けたい。牛乳なんてすでに加熱殺菌されていて、これからまた熱を加えるのに、その前に沸騰させたら計3回も加熱していることになる。風味うんぬん以前に、ちょっとやりすぎではないか。
それで調べてみると、やっぱ非加熱で成功する人もいるらしい。今度やってみよっと。
混ぜすぎないとか、寝かせる話
グルテンの関係で、混ぜすぎないに越したことはないのだろうし、寝かせた方が良いのだろうけど、冒頭に書いたように、温度さえ何とかできれば問題ないのだろうなと思っている。多くのカヌレづくり動画ではガンガン混ぜているようだし、小麦の質によっても変わるとのこと。
また、寝かせる時間を変えて検証した動画もあって、思ったほど差がなかった。寝かせた方が気泡のサイズが安定しているようには見えたけど、その程度。
砂糖の話
プリンで砂糖の量による出来上がりの違いを検証した方のブログがあった。それによると、砂糖の量が多いほど、「卵が固まる温度が高くなる」とあった。つまり温度の影響を減らすことができるということ。どの程度かわからないけど、砂糖が多い方が成功しやすいのだろう。それでも好みの問題で、わたしは増やさないつもり。
横にシワが寄っていたりするけど、わたしとしては成功の部類
ちなみに今日、カヌレを焼きながらこれらのことを考えていたので、まだ実践してない。いつも通り牛乳を沸騰させ、48時間寝かせたうえで、できるだけ前もって生地の温度を上げる(40度前後)、ということだけやってみた。そしたら、あいかわらず爆発したのだけど、1センチ程度でマシな方だった。いつもならヒーターの当たり方が強い部分だけ斜めになるのも今回はなかった。
途中で取り出してトントンして生地を落として、なんとなくそれっぽい仕上がりにはなったものの、見栄えとか考えるとまだまだ。
わたしのカヌレの焼き時間は70~80分くらい。普通は60分くらいらしいので、やっぱり温度が低いんだろう。
焼いてる間、ずっとオーブンの前に立って顔を近づけてカヌレを見ながら考えていたので、家族が「カヌレ恥ずかしがってるよ」とあきれていた。あたしはカヌレと対話してたの。
手に牛乳のにおいが染みついているのに気づいた。カヌレづくりに凝っておいてなんだけど、牛乳はあまり好きじゃない。食べ過ぎるとおなか壊すので気をつけなければ。