おやつく日記(旧:おやつをつくるやつ)

ひまさえあえば、ていねいにくらす

カヌレ日記⑯科学のヒントから成功の秘訣を考察する

前の記事を受けて、カヌレを成功させるためには結局どうすればいいのかを考えた。

 

 

 

前回の記事ではカヌレに関係するであろう科学反応について、とりあえず書籍からの引用をコピペしまくった。コピペしながら自分の中で「つまりこうすればうまくいくのでは?」という予想を立てていたのだけど、めんどくさいので書かなかった。

 

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その後、1,2回は作ったのだけど相変わらず微妙な出来上がりなので、記事にする気が起こらず放置。その後、用事で遠出をして帰ってきて風邪をひいたらカヌレなど作る気が完全に失せた。このままだと一生書かないのでちょっと重い腰を上げてみた。

 

 

 

前回を踏まえた予想

 

カヌレの成功のカギは、

①生地の温度をいかに素早く上げるか

同時に②上面の温度と底面(内部)の温度差をいかになくすか

だと考えている。これについてはさんざん過去記事でも書いているので同じの繰り返しになるけど、前回記事で調べたことでより確信した。

 

カラメル化はショ糖で165℃前後から、メイラード反応はそれより50度ほど低い温度で加速する

「マギーキッチンサイエンス」より

 

メイラード反応は115℃くらいから開始する。唯一生地がむき出しになっており、なおかつ上部ヒーターからの直接的な熱を受けるカヌレ上部は、一番温度が上がりやすい。そこで115℃からメイラード反応が起こり始め、表面が硬化してくると生地内部の水蒸気は下に逃げる。

こうなると型から飛び出す「発射」を免れることはできない。

(ほかの要因もあるだろうけど、温度に比べたら影響は小さいだろうと思っている)

 

発射させないためには、「上部の極端な温度上昇を防ぐこと」、そして「一番温度が上がりにくい底面をできるだけ早く温度上昇させること」。

 

それにはつまり、オーブンの庫内温度管理が重要。結局ここに戻るわけ。

 

業務用はまず容量が大きいことで庫内の温度差は比較的小さく、ヒーターの直接的な熱の影響を緩和できるようになっているはず。上下ヒーターそれぞれで調整できたりするようだし。なので、業務用で極端な失敗はないとみている。

 

ただ家庭用オーブンはモノによっては難しい。庫内の容量が小さいほど、ヒーターの熱の影響を受けやすく、開閉によって温度低下も起こりやすい。わたしは特にヒーターの熱の影響を受けやすいのが難点だと思ってる。どうしても上のヒーターに近くなってしまう。

 

これを解消するために、いろいろ試してはみた。

 

1) 天板を使わず、下に直に置くことで上ヒーターから遠ざけて下の温度を上げる。

2) オーブンに入れる前から、生地が固まらないギリギリまで型ごと生地を湯煎であたためる。

3) 焼きはじめは上にアルミホイルをかぶせて、できるだけ上ヒーターの直接の熱を受けないようにする。

 

などなど。しかしそのどれも「これぞ」というのはなかった。

 

(1)うちのオーブンの下ヒーターが極端に弱いのか、サーモスタットの計測方法に左右されているのかわからないが、結果は特に変わらなかった。

 

(2)やらないよりはやる方がマシかな、とは思えたが、これをやったら成功するとは言い切れない。

 

(3)まったく意味なし。むしろ温度が上がらなくなって逆効果だったかも。

 

思いついたけど試さなかったものとしては、「天板に乗せてあとはオーブンにいれるだけの状態で、コンロの火にかけて下部だけを高温にする」というもの。普通に危険なのでやめた。過去記事に書いたか忘れたけど、魚焼きグリルも試したなあ。こちらは焼きムラがひどすぎた。

 

あとは、ギリギリ周囲が固まったくらいでひっくり返すというものも、だいぶ昔に試している。結果は惨敗。

 

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このころは頑張ってた

 

家庭用オーブンについて追記。

最近見た本に書いてた。

オーブンの庫内の熱は、7割が熱源から発生するものであり、残りの3割は温まったオーブン庫内の壁面から放熱されたもの。

オーブンの表示で予熱温度に達していたとしても、庫内は7割程度しか温まってない。

 

参考にしたのはこちらの本

シュークリーム: めざす食感に必ずたどりつく8つの配合×ベスト相性の8種のクリーム

 

サーモスタットが壁面の熱を拾ってるということですかね。じゃあ全部、表示温度に対して3割増しで考えればいいか、というとそうでもない気がする。なぜならヒーターの熱量が増えるので、上面がさらに高温になりやすいから。にしても、3割もズレているというのは、誤差では済まない気がする。。

 

 

そういえば砂糖の話って

 

温度以外に「砂糖を増やせば発射しにくい」などと書いていた時期もあったけど、自分で書いておいて根拠はよくわからない。そう信じたいだけなのかもしれない。

 

砂糖を増やすことについては、たとえ実験であろうとやる気が起こらず、今まで誰かのレシピを見て作った1回以外はやっていない。実験以前に自分が食べたいものを作りたいので、過度に甘いお菓子を作りたくないのだ。これだけカヌレにこだわりながら、「そこは実証せんのかい」と我ながら思うけど。「おいしくてナンボ。見た目もうまくできたら万々歳」がモットー。まあ、気が向いたらいつかやるかな。

 

ちなみに、「そんなブサイクな見た目はカヌレじゃねえ」という人もいるだろうが、うちの甥っこは「うまいうまい」と食べている。市販のカヌレをあまり知らないので、うちの一族ではわたしのカヌレカヌレなのだ。

 

わたし作・「カヌレ

 

おまけ・米粉と小麦粉

 

余談として、米粉カヌレは一回作ったきり「もういいかな」と思った。米粉の特性上、時間がたつほど固くなるので、カヌレっぽい食感だという人もいるかもしれないが、小麦粉で焼いたときのカリっとした食感とはまったく性質が違う。

 

簡単にいうと、米は水を含んで「糊化」し、水分が失われてパサパサになることを「老化」するという。固くなるのはこの「老化」であって、おいしくなくなる現象のこと。

 

※今回はこちらの記事を参照。

 

study-z.net

 

実際、放置したごはんのような固さを感じた。小麦粉で焼いた場合は、それこそメイラード反応やらカラメル化でできた触感なわけで、焼いたことによって生地表面が乾燥することでカリっという触感になり、時間がたつと水分を含んでふにゃっとなる。おなじ「カリっ」という表現でも違うってこと。国語って奥深いよね。

どちらが好きかは好みだけど、わたしは小麦が好きかなということで。