久々に作ったカヌレでミツロウを使ってみたら良かった。
今年に入って初か、あるいは2回目くらいのカヌレづくり。昨年、作りすぎて飽きたのでしばらく遠ざかっていたら、なんとなく作りたくなった今日このごろです。
前回のカヌレ日記
カヌレ日記⑫クルミ入りはおすすめ - おやつをつくるやつ
ミツロウとオイルでそれぞれ焼いてみた
カヌレづくりを始めると同時にミツロウを買ったはいいものの、取り扱いが面倒なのですぐに止め、代わりにバターやオイルを適当に塗るのが通常運転になっていた。
ミツロウのメリットについて軽く検索したところ、「型から抜きやすい」「バリっとした仕上がりになる」らしい。
取り扱いのめんどくささと天秤にかけると、楽な方が勝ったので長いこと棚の奥に眠っていたのだけれど、久しぶりに気が向いて使ってみることに。
すると、わたしの場合はミツロウの方が断然仕上がりが良いということが分かった。
オイル × プレーン
今回は通常の倍量の生地を仕込んで半分に分けてプレーンと黒ウーロン茶入りにした。
さらにプレーンは24時間後、黒ウーロンは48時間後に焼いた。
具材やら寝かせる時間やら、条件が全然違うので比較するには不適当なんだけど、今回の検証ではこの差は無視して大丈夫。(経験上)
わたしのカヌレレシピだと、今回のプレーンみたいになるのがほとんど。
いびつな形のカヌレ。ニョロニョロの森にありそう
真ん中の凹みが大きくて、その部分と周囲の焼きムラも大きい。そしてオーブン庫内の置く場所によって底が斜めになる。
もうこれはオーブンの癖だから仕方ない、と諦めていた。
ミツロウ × 黒ウーロン
しかし黒ウーロンの方を見ると、底は真っ直ぐだし凹みも少ない。
どういうこと?
※茶葉が底にたまるので上部が黒っぽい
さっきも書いたけど、今回の出来上がりの差について、「茶葉の有無」「寝かせた時間」の違いが影響しているとは考えていない。
だとしたら、オイルとミツロウの違いしかない。
明らかに形状が違う
オイルとミツロウの違いを考察
カヌレづくりを開始してから型に塗るのはほぼバターかオイルにしていて、ここ最近はより楽チンなオイルを塗っていた。プロやアマの方もオイルスプレーを使っていたから、いいだろうとおもって。
オイルとミツロウの違いというと、融点(融解温度)の差。オイルは常温ですでに液体だし、バターでも40度程度。そしてミツロウは60度以上と一番高い。
オーブンに入れてから温度が一気に上がらないと、コーティングしたオイルやバターは底に溜まる。底の真ん中は盛り上がっているので、周囲のミゾに溜まりやすい。するとオイルの層ができた周囲は温度が上がりやすくなり、真ん中の薄くなった部分はやや低くなる。底の中央と周囲で温度差ができた結果、火が通った周囲は先に固くなり、中央の柔らかい生地が押し上げられる。それであんなに窪んだ形になる。
※図はカヌレ型の断面。黄色がバター(オイル)。雑すぎるのでそのうち差し替えると思う
ミツロウを使えば60度まで溶けないので底面の凹凸で温度差がでない。ミツロウが溶ける前に生地の温度が均一に上がれば、底面の場所によって焼きムラがつかない。
と予想した。
今回もこれまでと同様に、焼成20分ほどで型から飛び出してしまったのだけれど、途中でトントンと落としたら難なく焼けた。
いつもなら、真ん中の凹みが大きくて、そこだけ生焼けのようになるので、型から出してひっくり返して10分ほど焼かなければいけないのだが、今回は凹みが小さく、真ん中も焼き色がついていたのでその必要がなかったのに、終わってから気づいた。
側面が柔らかい状態で型から出してひっくり返すと、重力のせいで少々潰れてしまうのでちょっと不格好になる。できることなら型に入れたまま焼き上げた方がいいに決まっている。
ほかにもミツロウはオイルやバターと性質が違うというのもあるだろう。成分など詳しい話について追求する気はないけど、型から抜けやすいのと焼きムラができにくいのは同じところに理由がありそう。
条件がシビアだから影響を受けた?
しかしミツロウと焼きムラの関係について言及している人はぱっと見たところいない。いたとしても、少ないだろう。
わたしがミツロウの有無で影響を受けたのは、条件がシビアだからだと思う。
まず、牛乳の量に対する砂糖の使用量が少ない。砂糖を多く入れる方が安定しやすく、少ないほど難しくなるので、こういう温度差が響きやすい。
次に、オーブンのスペックが低い。2年前に買い替えた大手メーカーのもので、高くもなく安くもなく、という普通のを買ったつもりだった。でもマックス250度ではなく300度にすべきだったかも。あと、オーブンを出しているメーカーの中では一番人気がなかったことに後で気づいた。
それでも何とか使いこなそうと、予熱プラス10~20分足すなどして工夫はしているが、本当に上がっているのか疑問。
200度以上で余熱した後でキャンセルすると、再度200度以上に設定できないという、イラン機能もついている。よほど温度を上げさせたくないらしく、何のために250度設定になってるんだかよく分からない。これまで気にしたことはなかったが、温度が重要なカヌレでは大事。設定温度にならないっておかしいでしょ、とたまにムカつく。
そして銅の型を使っている。知らずに買ったけど、銅型は難しいらしい。
砂糖を多くしたり、高温で安定しやすいオーブンを使ったり、銅以外の型を使うならここまで考えなくてもいいのだろう。
ミツロウは取り扱いがめんどくさいが、ちゃんと道具を準備して段取りさえ慣れれば使えるっちゃ使える。ヒマな時は頑張ってミツロウを使おうかな。
写真の鉄観音はイメージ。空き缶に黒ウーロン茶を入れてる。
<過去のカヌレ日記>
① カヌレを作ろうと思い立ち、レシピ選定と型の購入
② 色んなフレーバーを作っているうちに難しさを知る
③ 寝かせる時間を24Hと48Hで変える
④ 温度を変えてみる
⑤ 途中で中身をひっくり返してみる
⑥ 天板でなく網を使う
⑦ 振り返り
⑧ また温度を変えてみる
⑨ 違うレシピにする
⑩ 元のレシピをアレンジ
⑪ 初心に戻ってYouTubeで勉強
⑫ クルミ入りはおいしい
おまけ カヌレの歴史を考えてみた