おやつく日記(旧:おやつをつくるやつ)

ひまさえあえば、ていねいにくらす

料理番組「レイチェルのキッチンノート」

料理するだけの料理番組はあまり見なくて、ストーリー性のあるものが好き。

 

 

今はまっているのが放送中のこちら。

www4.nhk.or.jp

 紹介している料理自体は、日本の一般家庭ではなさそうなものを使っていたり、おもてなし料理だったりするので、これを見て何かを作ったことはない。が、なんだか見ているだけで料理がしたくなっちゃうのだ。私にとっては「料理番組」ではなく「料理意欲をかきたてる番組」ポジション。こんなに楽しく料理していいんだ…と初めて見たときは目から鱗が落ちた。

 

イギリス人の”フードライター兼料理人”のレイチェル・クーがヨーロッパを旅して、そこで得た知識やインスピレーションを元にアレンジ料理を披露する。こうやって文章に書くと普通なんだけど、頑張ってその魅力を書いてみる。

 

レイチェルが見た目も性格もキュート。これに終始する。
黒髪ぱっつんにビビッドカラーの服がよく似合うお洒落な女性だ。ついでに父親がマレーシア人とのことで、どことなくアジアの香りも漂い親近感がわく。そして料理が純粋に好きそう。

 

番組前半は、レイチェルがプラプラと町中を歩いて、人気のレストランで料理人と名物料理を一緒に作る。そのやり取りがすごく自然。料理人が途中まで作っているのを見て「わたしもやってみたーい☆」と交代してもらう。料理人に教えてもらいながら自分でも作ってみて「おいしそう!今すぐ食べたい!」なんてフレンドリーな会話は、近所の料理好きのお姉さんが教えてもらっているかのようなフランクさ(吹き替えのテンションが高いので、その効果も大きいかもしれない)。好奇心旺盛で、反応も素直な感じ。それでいてその場で得た知識をすぐさま消化しながら、「これはこういうことね」とか的確な事を言って、料理人としてもしっかり会話している。

 

町歩きが終わったら、「私もインスピレーションを得て、レシピを考えてみました」とレイチェルのキッチンで料理が始まる。自宅と思われるキッチンもまたカラフルでレイアウトにもセンスが光る。鍋とかは使い込んだ形跡があって普段ぽい感じが増す。日本の料理番組は全部道具がピカピカだから初めて見たときは意外だった。

 

材料の分量とか簡単に言うことはあってもそんなきっちりじゃないし、テロップで出たりもしない。HPを見たらそれなりのレシピが載っていたから、後でスタッフがちゃんとやってるんだろう。番組内では料理が進むのに合わせて材料も冷蔵庫や棚から取り出して「えいやー」って感じで適当に入れている(ように見える)。まさに家で料理している雰囲気。カメラワークも、手元のどアップとかレイチェルの表情とか動きながら撮っていてドキュメンタリーぽい。レイチェルの家に遊びに来た友達みたいな感覚に陥る。

 

たまに手がすべって落として「やっちゃった、てへぺろ」みたいなのもそのまま流す。その自由な感じがちょっと平野レミさんぽいと思った。系統は全然違うけど、人間的魅力を併せ持つ料理人というところは共通しているかと。あと平野レミさんの料理で、皿の上にコロッケの中身を置いて上からパン粉をかけて焼いて「食べたらコロッケ」という大胆な料理がある。材料は同じだけど、工程とか見た目を分解した料理というイメージ。レイチェルもそれと同じ思考回路で生み出された料理を作ったりしている。

 

レシピは番組スタッフと一緒に考えてるのか知らないけど、ここでもレイチェルっぽさが満載。そんなに難しそうじゃない料理も、どこかのレストランみたいな華やかな仕上がり。お皿の上に森を作ったかのようなサラダや、膨らませた風船にチョコをかけて作った食べられる器とか。よくそんなの思いつくわと感心する。と思ったら大学でデザインを学んでいて、ル・コルドン・ブルーも行っていたらしい。最強の組み合わせじゃないか。

 

大胆で斬新、見た目に華やか、そしてお手軽。そんな料理を楽しそうに「これも入れちゃおっと」みたいな軽いノリで作るレイチェルを見ていたら、料理心を刺激される。

 

この番組はレイチェルじゃないと成立しない。日本で言うところの上沼恵美子のおしゃべりクッキングくらい替えがきかない。

 

きっちりしなければ、と真面目に料理に向かいがちだけど、本来は手順も使わなきゃいけない材料も1つに決まっている訳ではない。考えすぎて作るのがおっくうになるくらいなら、雑でも手作りの方がましなんじゃないか。安い食材で適当な料理でも、自分の好みの味付けは時に高級な外食よりおいしい。

本当に料理が苦手な人はまた違うかもしれないが、それほど料理好きではない母も横で興味深そうに見ていた。

 おいしいものを、と思う前に楽しく料理ができたらいい、ということを教えてもらった番組だ。