おやつく日記(旧:おやつをつくるやつ)

ひまさえあえば、ていねいにくらす

なかしましほさんが好き

子どもの頃のお菓子づくりは、バターや生クリームをふんだんに使った。大人になって一時期お菓子作りから離れ、また戻ってきたときもそれは続いた。

 

しかし体質と共に食の好みも変わる。作ろうかなという気になっても「いっぱい作っても食べ切れないし、やっぱりいいや」と思うことが増えた。

 

そんな時に出会ったのがなかしましほさん。この出会いは自分の中で革命的だった。

 

まいにち食べたい“ごはんのような”クッキーとビスケットの本

まいにち食べたい“ごはんのような”クッキーとビスケットの本

 

 

 自分が思うなかしましほさんレシピの魅力を挙げる。

 

  • ヘルシー関係なくおいしい

ヘルシー系材料を使いながらもそれがヘルシーだからではなく「おいしいから」使うという。だいぶ前にヘルシー系のお菓子のレシピ本を持っていて、味は悪くないが、だからといってまた食べたいと思うものでもなかった。菜種油がベースのなかしましほさんのお菓子は、やはりバターを使うものと風味が違うが、もう全然別ものとして抜群においしい(特にクッキー)。

 

  • 食べ切れる量を短時間で作れること

かつての手作りお菓子は特別なものだった。「今日はお菓子をつくるぞ」と気合を入れて豪華なものをドーン、みたいな。しかしこの本だとお昼ご飯を作るようにささっと作れる。「ごはんのようにまいにちたべたい―」のタイトルに偽りなし。(まいにちたべたい”味”という意味だろうけど)

本の表紙から見ても分かるように、載っているのは素朴なお菓子ばかり。そうは言ってもスイートポテトやプリンとか昔ながらだけではなく、抹茶やナッツなどささやかな非日常もあり。母親時代の素朴なおやつとはまた違う「現代版素朴なおやつ」だ。

生クリームやバターたっぷり、聞いたことのない食材を使った芸術品のようなスイーツに憧れるときもあったが、パティシエを目指す訳でもなく、情熱は続かなかった。そういうのはごくたまのハレの日に買えばいい。

 

  • クッキー系は手で混ぜる

季節や天気によっても変わる生地の状況が、視覚だけでなく触覚でも分かる。レシピ本で写真や文章をいくら見ても、ほどよい固さなんて一部しか伝わらない。結局は何度も繰り返すうちにコツがつかめるようになるのだが、泡だて器やゴムべらより手から伝わるダイレクトな感覚は大きい。そう考えると、なかしましほさんは意外とお菓子初心者におすすめかもしれない。

 

  • 意図せずアレルギー対応

小さい甥っ子がアレルギーで卵と乳製品が食べられない。なかしましほさんレシピはこれをクリアしているのが多い。普通においしいのは、アレルギー対応のために作った本ではないからだろう。

甥の母である義姉は料理上手だが、仕事が忙しくお菓子を作る余裕はない。おそらく普段は洋菓子など危なくて食べさせていないと思う。だからたまにわが家に来た食いしん坊の甥っ子が、私のお菓子を口にパンパンに詰めているのを見ると胸がいっぱいになる。本当になかしましほ様々。

 

この夏、なかしましほさんの店に行った。
関西在住の私は観光や用事で東京に行くとしても、郊外の店まで行くつもりはなかった。が、兄の家の近所であることが判明したので、あいさつついでに立ち寄る口実ができた。何たる幸福な偶然。

店の手前まで来ると、特徴的な大きな紙袋を持った女性がうれしそうな顔で歩いてきて、自分と一緒(ファン)に違いない、とピンときた。

入店すると小ぢんまりしたカフェコーナーは満席だった。しかし持ち帰りの先客は1人だけ。兄曰く、持ち帰りも常に行列ができているので、こんなに空いているのは珍しいとのことだった。これまた幸運だった。行列には並ばない主義なので、それを見たら諦めていただろう。

レシピで見たことのあるお菓子がズラリと並ぶ。それだけでテンションは最高潮。全部買いたいところだが、3種類だけクッキーを買った。その後も「うわー」ときょろきょろ店内を見回していたのを客や店員に怪訝な顔で見られた気がするが、そんなことはどうでもいい。私もヘラヘラした顔で店を出たことだろう。

 

帰って速攻、そしてじっくりと食べた。味、歯ごたえ、見た目、普段私が作るものと全然違う。このクッキーはこんな感じなのか!イメージちゃうやんけ!と衝撃を受け、今後も精進することを誓った。