おやつく日記(旧:おやつをつくるやつ)

ひまさえあえば、ていねいにくらす

煎茶とようかんのビスコッティ

甘すぎる和菓子が苦手。ようかんもその1つだ。

 

甘すぎるものを食べると、頭がもやもやしてくる。頭痛とは違う変な感覚だ。たぶん、一定量以上の砂糖に反応しているのだと思う。

好きな和菓子もある一方、もなかやようかんなどシンプルな和菓子は一口ごとにお茶1杯くらい飲まないと食べられない。

ここ数日、台所を通るたびに頂き物のようかんが目に入ってくる。偶然、2人の方からそれぞれまったく違う地域の有名ようかんをもらった。いくつか両親がつまんだ形跡はあるが、なかなかなくならない。自分が好きならあっという間に食べてやるのに。一日のうちに何度も「まだある……」と思う。この気持ちにカタをつけるにはーーそうだ、お菓子の材料に使えば食べられるかも。 

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ケーキに入れるかスコーンに入れるかとレシピをあさっていたら、いいのを見つけた。

まいにち食べたい“ごはんのような”クッキーとビスケットの本

まいにち食べたい“ごはんのような”クッキーとビスケットの本

 

こちらの本から「ほうじ茶と甘納豆のビスコッティ」。

なかしましほさんは和素材がお好きなようで、意外な組み合わせのレシピが転がっていておもしろい。ちなみに同じシリーズ「まいにち食べたい~」のケーキの本には、ほうじ茶と甘納豆のスコーンも載っていた。よほど相性がいいのか。

 

この甘納豆をようかんに置き換える。ようかんも原料は豆と砂糖だから、似たようなもんでしょう。

そしてほうじ茶は、先日のように粉茶から手作りするつもりでいた。

ほうじ茶クッキー - おやつをつくるやつ

だが待てよ、あとで熱を加えるのにわざわざ先に手間をかける必要があるのか? 粉茶をそのまま混ぜてオーブンに入れたらほうじ茶になるんじゃね?

”粉茶”とは煎茶の製造過程で出てくる残りカスで安いわりにおいしく、うちで常備している。

ということで、今回はほうじ茶ではなく粉茶(=煎茶)を使う。レシピによると、ほうじ茶をフードプロセッサーなどで細かくしなければならないが、粉茶はもともと細かいのでそのまま使える。

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 中に入れるのはようかん(左)と粉茶

そして今回、甘味として「てんさい糖」を使う。

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 てんさい糖はテンサイ=サトウダイコンからとれるやつ。

砂糖の種類というと、上白糖にグラニュー糖、三温糖にザラメなど多数あるが、これらは精製方法の違いで分類されるものであり、原料としてはサトウダイコンかサトウキビの2種類らしい。

お砂糖って何からできているの? | お砂糖の「じつは…」 | 【スプーン印】の三井製糖株式会社

私がよく使っているきび砂糖はもちろんサトウキビが原料で、それより精製度が低いものが黒糖。精製度が低いほどミネラルなどの栄養分が多い。

日本でいうと、サトウキビといえば沖縄、サトウダイコンといえば北海道、と最南端と最北端で作られている。昔から知っていた事実ではあるが、どんな場所でもちゃんと糖分を得られる自然のしくみってすごい。ついでに、サトウキビは体を冷やす効果があり、サトウダイコンは逆に温めるそう。育つ場所の気候に合った性質だ。どちらも手に入るなら、冬のお菓子や料理はてんさい糖を使うのがいいかもしれない。

 

卵にてんさい糖を加えて混ぜる。

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粒が大きくしばらくはザラザラしているが、しばらくすると溶けて

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もったりしてくる。

粉茶を入れて木べらに持ち替えてさっくり混ぜ

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少し粉っぽさが残る程度でようかんを入れる。

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生地をオーブンにそのまま置く。

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ねっとりべったり

RPGの敵に出てきそうな奇妙なビジュアルの塊を平らに成形する。そのまま触ると手についてしまうが、水をつけるときれいにできる。

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まずはオーブンで15分焼くと……

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うわっ

生地の隙間から沸騰したようかんが吹き出ている。岩から押し出されるマグマさながら。RPGに出てくる化物の最期のようでもあり少し怖い。

小豆とか甘納豆と同じように考えていたが、ようかんは水分が多いことを忘れていた。寒天などで固めているため、常温では固体のままで生地に水分が馴染まず、オーブンで一気に温度が上がるため寒天が溶け、高温で含まれている砂糖が飴状になってしまったらしい。

棒状に切り分けてみると、飴になったようかんが伸びた。ついでに焼く前は固体だったのが液体になったため、焼き上げ後の生地がクレーターのようになった。

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粗熱を取ると、飴が固まる。ただ小豆も含まれているため、カチカチではなくキャラメルくらいの固さになった。

さて、今度は低温でじっくり焼いて水分を飛ばさなければいけないのだが、飴状ようかんはどうなるのか。こちらのHPにわかりやすい砂糖の変化について書かれていた。

熱を加えて七変化|砂糖と調理の科学|精糖工業会

これを見ると、この1回目の焼きでべっこう飴くらいになったらしい。

次の焼きは150度なので、べっこう飴がもう1度溶けて固まるということになるのだろうか。焦げて食べられない、なんてことにはならないだろうと踏んで焼いてみる。

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出来上がり。

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溶岩が冷えて固まったようなようかん

ようかんはその後大きく変化することもなく、冷ますと固めのキャラメルくらいになった。火山活動をコンパクトに観察したようなお菓子づくりだった。

 

ぽりっと一口。固いは固いが、水分も多少残っているため外で買うビスコッティよりは食べやすい。そして熱を加えるとほうじ茶になると予想していた粉茶(煎茶)は、それほど香ばしい感じもせず煎茶のままだった。生地に混ぜ込んだりしているので、思っているほど茶葉自体には火が通っていないのかも。

そして姿形を変えたようかんの味もそのままだった。そうは言っても、ようかんはみずみずしさがあってのものだなと思った。ビスコッティには使わないほうがいい。単純にもったいない(当たり前だろという声も飛んできそうだが)。

ビスコッティというお菓子としては悪くない出来だったが、個人的にはやっぱり舌に残る甘さが気になる。材料として使ったにもかかわらずクドく感じるので、使っている砂糖の種類ではないかと考えている(私が敏感すぎるだけなので、普通の人はさほど違和感はないだろう)。

ちなみに、この1本を食べてお湯でも飲めば、お茶とともにようかんを食べているのと同じことになる。

 

両親も試食。ようかんが入っているとは知らずに食べた母にタネ明かしをすると「え、ドライフルーツじゃなかったん?」と言っていた。さすがにその間違いはないやろ!

確かに何も知らされずに食べると甘味の強いドライフルーツと勘違いする可能性はなきにしもあらず。しかしいつも手作りお菓子食べているのだから、そこは気づいてほしかった。

家庭菜園をしているくせに白菜とレタスの味の違いが判らない父にはハナから聞くまい。