秋。柿の季節。
知り合い複数人から、合計50個を超える柿を貰った。
ご近所さんから北陸まで産地はさまざまだ。
裏に住む大家族や違う知り合いなどに配ってもまたもらう。
そのままでも十分うまいが、せっかくだからお菓子にしてみることにした。
今回はできるだけそのままの形とか味を生かしたいなと思ったので、タルトに決定。生ではなく焼くやつ。ケーキ屋で見かける洋ナシのタルトみたいなのが作りたい。洋ナシの薄切りが放射状に配列されているのが、芸術作品みたいで好きなのだ。
レシピ本はなかしましほさん以外にも何冊かあるが、さすがに柿を使ったものはない。ネットで検索したら希望に近いレシピを見つけた。
シナモン風味の柿タルト レシピ・作り方 by moca0115|楽天レシピ
なかしましほさんの本にも似たレシピがあった。ただし「ピーカンナッツのタルト」だ。この2つを組み合わせる。
ネットのレシピとピーカンナッツタルトは、材料の違いはあるが雰囲気は一緒。なかしましほさんレシピでピーカンナッツの代わりに柿のスライスを乗せれば柿タルトになりそう。
ということでレシピの90㌫はなかしましほさんの本を参照した。
タルト生地につめるアーモンドクリームには粉末状のアーモンド“アーモンドプードル”を使う。アーモンドプードルは数百㌘単位で売っているが私は買わない。お菓子を作る度にアーモンドプードルも作っちゃう。理由は第1にアーモンドもキロ単位で購入しているから。第2にアーモンドプードルを使うお菓子ばかり作る訳でもないのに、酸化がどんどん進むのが気に入らないから。
ググればアーモンドからアーモンドプードルを作るレシピが載っているが、しっくりこないので過去に自分で色々と試した。
行きついたのはおろし金(さほど試行錯誤していない)。作り方はまんま。フライパンでからいりしたら、1個ずつすりおろす。慣れたら2個ずつ。摩擦熱も最小限だから香りがいい―と信じている。ただし時間がかかって面倒なので、これを使うお菓子を作る回数は自然と減る。
そこでだ。今日は新たにアイディアが浮かんだので試すことにした。コーヒーミルに登場してもらう。よく使うミルにアーモンドのカスが残るのは嫌だから、会社用に買った携帯用のミルを使うことにした。ミニサイズなので若干チャチだが、十分な仕事をしてくれる。
アーモンドを半分に切って、投入口へ入れてゴリゴリ……のつもりが、豆が擦れる音や手の感触から歯が空回りしているのが分かった。かなり回したはずなのに挽けた粉はほんの少し。豆の固さが違うからかコーヒー豆のようにはいかないらしい。挽き具合を調整したりしてしばらくあがいたが、諦めておろし金に戻った。
ゴリゴリ
30分以上かけて80㌘。手がつりかけた。最後まで下ろせなかった小さいアーモンドを使ってもう一度コーヒーミルで挽いたら、さっきよりうまくいった。しかしサイズがまばらで、すこし色が濃い。これはコーヒー豆が残っていたのもあるかもしれないが、擦れすぎて油分が染み出てきたのではないか。以前、すり鉢でやった時もこんな感じだったから。
右上がミルで挽いた分。やや茶色い。そしてサイズがまばら
結論。おろし金が一番良い。でも次はアーモンドプードル買おうかな。
16㌢のタルト型も持っているが、今日は大きいのを焼きたかったので30㌢のケーキ型を使う。タルト型の場合は生地が付かないように油を塗り込むが、ケーキ型は溝に油が入り込むのが嫌なので、クッキングシートを適当に切ってその上に生地を張り付けた。
余った生地はココット型でミニタルトにする。
タルト親子
焼いている間にアーモンドクリームを作って上に乗せる柿を切り、洗い物も済ませる。
アーモンドクリームを作る際には「木べら」ならぬ「木しゃもじ」を使う。レシピには大抵「ゴムべら」と書かれているのだが、木しゃもじがあるからエエやろ、ということで。真ん中には「寿」の文字。いつも食べる人の幸せを想像しながらお菓子作りをしている。親が結婚式の引き出物でもらったのだろうと思っていたら、いま写真を見て気づいた。熊野那智大社? お土産? なんだかご利益がありそうだ。
柿を薄切りするのは人生初だったので、ちょっと苦労した。種がジャマできれいな薄切りができないじゃないか。種はバターナイフでえぐり取った。熟れているとぐちゃぐちゃになるので、さくっと固いものを使う。
それから仕上げ用のピューレ。熟し気味の部分を包丁でみじん切り。普通はフードプロセッサーを使うところだろうが、うちは裏ごし器を使う。先程の木しゃもじでせっせと裏ごす。透明で深みのある橙は気品があった。色だけ見るとニンジンとそう変わらないはずなのに全然違うのはなぜだろう。
昨日も登場したドライフルーツを漬けたラム酒を大さじ1とって混ぜた。
約20分後、うっすら焼目のついたタルト生地を取り出して冷ました後、アーモンドクリームを入れて、上からシナモンを振る。シナモンスティックしかないので、これまたおろし金ですりおろす。固すぎるため、たまに大粒の破片が落ちるのはご愛嬌。放射状に柿を並べていくと、“お菓子作ってます”感が出てテンション上がる。
再びオーブンで30分焼く。
取りだしたら、型から外してピューレとラム酒を合わせたものを塗って完成。エエやないの。と1人で写真を撮りながらホレボレ。
熱によって少し乾いた柿断面の表情がいい
アーモンドとシナモンの香りもほどよく、文句なしにおいしかった。ただもう少し柿の主張があってもよかったかな。やはり生タルトか、タルトタタン風とか、クッキーとか。まだ残っていたら次回も何か作ろう。
残ったピューレは炭酸で割って飲みますか。
幸せ。